高瀬大輔さん

2018-05-13

記念すべき一人目は、テノールの高瀬大輔さん。

愛知県出身で、現在は東京芸術大学の声楽科3年次に在籍されている高瀬さんに、芸大受験への道のりや、大学生活でのお話をうかがいました。

芸大を受験されたきっかけを教えてください。

高校時代、合唱部には所属していたのですが、特にこれといった目標もなく、進学校だったこともあって、最初は一般大学を受験したんです。

高校3年生の夏に合唱部の顧問の先生に相談などはしましたが、ふんぎりがつかなくて...

受験した一般大学は、希望した学科に受からなかったので浪人することを決めました。その時に、どうせなら一度芸大を受験してみようかと思ったのがきっかけです。なかなか目指せるものではないし。未だになんでこっちの道に来たんだろうと思うことはありますが(笑)。

声楽科の人は、高校で合唱部に所属されていた人が多いと思います。どうして高校では合唱部に入ろうと思ったんですか?

高校の入学式の日に、体育館へ向かう道のりで合唱部の人がずっと歌っていて、すげー!と思ったのがきっかけです。中学の時にも合唱はやっていたので、歌うことにも抵抗はありませんでした。

芸大の受験勉強期間はどのくらいですか?

「声楽」を勉強し始めたのは高校を卒業してからなので、受験が2月頃とすると、10~11ヶ月くらいですね。

ということは、1回目の受験で合格ですか?すごいですね!

受けた科が「声楽科」というのが大きな理由だと思います。男性の場合、高校から声楽を始める人が多いので、そんなに準備期間に差が出なかったのかなと。あとは、所属していた合唱部が強豪校だったので、そこである程度は鍛えられていたと思います。

受験を決めてから、どのようなことをされましたか?

最初は、高校の合唱部の顧問の先生に声楽を習い始めました。あとは、受験にあたりソルフェージュ(注1)も必要になってくるので、もう一人、ソルフェージュを教えてくれる声楽の先生にもつきました。ずっと進学校で、周りのみんなと同じ勉強しかしてこなかったので、芸大受験を決めた当初は本当に音楽のことを何も知らなかったんです。シャープが一つだと何調か、みたいなことも全然わからなくて(笑)。

ただ、顧問の先生もソルフェージュの先生も、どちらも女性の先生だったので、途中からテノールの先生のところへも通いました。地元の名古屋の先生と、東京の先生、2人に師事しました。東京の先生は芸大で教授をされている方なのですが、実は僕の高校の先輩で過去に東京芸大の声楽科に合格した方がいて、その先輩がご紹介してくださいました。

あとは、「日本声楽家協会」というNPO法人があるのですが、そこで開催されている、東京藝術大学を受験する人たち向けのセミナーに行きました。高校が普通科だったので、同世代の人たちの歌を聞いたことがなくて。そのセミナーで初めて周りの歌を聞いて、もっと頑張らなきゃって思いました。合唱部で歌ってはいましたが、一人で歌うことに慣れていなかったんです。できるだけ一人で歌う訓練をするために、ジュリアード音楽院の声楽オーディションを受けてみたり、私立の音大も4つ受験して、少しでも一人で演奏することに慣れるよう心がけました。

でも受験準備ばかりするのではなくて、オンとオフをはっきり分けることも心がけていました。自営業をしている実家の手伝いや、運転免許もこの期間に取りました。高校の合唱部のOBOGで構成されている合唱団があって、そこにも所属して長崎での大会なども一緒に行ったり...楽しんでいたというと語弊がありますが、死に物狂いで練習するというよりは、のびやかに過ごしていたかなと思います。

センター試験の勉強をしなくていいというのも大きかったかもしれません。一般大学を受験した現役時代に死ぬほど勉強したので(笑)。

有意義な準備期間を経て挑んだ芸大受験は、ばっちりだったのでは?

全然ダメでした(笑)。一次試験も二次も三次も、終わるたびに落ちたと思っていました。

芸大受験は一次試験から三次試験が終わるまでが長いのですが、ずっと東京に滞在していました。試験がない日も当然あるのですが、散策などをする余裕なんて全然なくて。掃除しなくていいですって言って、ホテルにずっとこもっていました。一人にして、みたいな(笑)。試験が終わるごとに地元に帰ればよかったなって思います。最終発表は見に行く勇気がなくて、結果を友達に教えてもらいました。

なんと!とにかく、合格おめでとうございます。では次に、芸大生活について教えてください。

声楽科には、学年をとりまとめるインスペクター、通称インペクという役割があるのですが、それに立候補しました。主に、合唱の授業や学祭での学年イベントの取りまとめをしたりします。もともと中学、高校と学年代表を経験していたので、人前に立つのは苦ではないですね。僕は企画をすることは苦手ですが、まとめることならできるかな、と思って。インペクをしていると、たくさんの人と関わることができるのもいいところです。合唱指揮の先生や奏楽堂(注2)のスタッフの方にご挨拶にいったりするので。

合唱の授業!芸大の授業となると、歌う授業ばかりなんですか?

全然そんなことはないです。やはり声楽は歌詞、言葉を扱うので、語学の授業もしっかりありますし、僕は教職の授業もとっているので、座学もあります。でも座学といっても西洋音楽史などが主なので、音楽に全く関係ない授業というのはほとんどないですね。

放課後の過ごし方などを教えてください。

練習や勉強、オペラを見に行く時間を土日に確保したいので、平日の授業後、火曜と水曜と金曜日に週3でバイトをしています。火曜日がレッスンなので、前日の月曜に練習をして、木曜日は新しい曲の練習に取り組む、といったスケジュールです。

バイトは融通の利くカフェのバイトにしました。行きたい演奏会などに行けなくなってしまうので。

芸大といえば、学祭である「藝祭」が有名ですが、去年の藝祭はどう過ごされましたか?

3つの演奏会に携わっていたので、模擬店などはほとんど楽しめていません。とにかく忙しくて、自分が歌う演奏企画の時に声がガラガラになっていたりなど、ちょっと苦い思いもしました。藝祭は9月の頭にあるので、夏休みの半分はほとんど藝祭の準備にささげましたね。

声楽科以外の人たちと交流などはありますか?

あります。ソルフェージュの授業があるのですが、レベル別にいろいろな科が合同で受講するので、そこで友達になったりします。語学の授業でも他科の人と一緒になったりしますね。小さな大学なので、校舎内ですれ違うことも多く、芸大のいいところだなと思います。

今後の目標などを教えてください。

留学したいと考えています。金銭面を考えると、比較的授業料の安いドイツが現実的ですが、僕はもともと英語の勉強をかなりしていたので、アメリカもいいなと思っています。留学する前に芸大の大学院は受けるつもりではいますが、もしそこで落ちてしまったら、院にこだわらずにいきなり留学してもいいかなと思っています。

今までの話からわかると思いますが、僕は音楽に関しては全然エリートではないんです。周りの同級生は、これまでにコンクールで賞を取ってきた人がゴロゴロいますし。でも歌は、初めて僕が自主的に練習をしたものかなって思います。気づいたら歌っている、みたいな。

でも難しい世界なので、もし音楽で大成できなかったら、その時はインペクを務めていたことを強みにして、企業に勤める事もできなくはないかなと思います。

高瀬さんなら、どのような進路に進まれても、その時に一番ベストな未来を切り開いていけると思います。

ありがとうございます。厳しい世界ですからどうなるかわかりませんが、生きてはいけると思います!

注釈
注1「ソルフェージュ」
西洋音楽の学習において、楽譜を読むことを中心とした基礎訓練のこと。
注2「奏楽堂」
東京芸術大学内の施設。地上5階、地下2階のホールで、フランスのガルニエ製オルガンが設置されている。座席数は最大で1,140席。
〜高瀬 大輔(たかせ だいすけ)〜

愛知県出身。愛知県立岡崎高等学校普通科を卒業後、声楽を学び始める。これまでに、近藤惠子、中井亮一、永田峰雄の各氏に師事。現在、東京藝術大学音楽学部声楽科3年次在籍中。

*カリキュラムや入試に関する内容は、当時の内容となっております。具体的な試験内容など、公式の受験要項を必ずご確認いただきますよう、お願いいたします。

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