横山和美さん

2018-06-24

いつもは受験に焦点を当ててお送りしていますが、今回は趣向を変えて、コンクールのことを中心にお届けいたします。

インタビューにご協力いただいたのは、第86回日本音楽コンクール、声楽部門で第2位を受賞された、ソプラノの横山和美さんです。

コンクールについて、全体を通しての感想を教えてください。

自分にとって想像もできないくらいランクが上のコンクールだったので、そもそも本選まで残るということが信じらませんでした。なので本選には、オーケストラと一緒に歌えることをとにかく楽しもうと思って臨みました。結果、オケで歌うことを楽しめたうえに立派な賞までいただくことができ、光栄であると思うと同時に、2位という結果は、音楽の神様が「これからも調子に乗ることなく頑張りなさい。」と背中を押してくれたんだと受け止めています。今後も飛躍をしていけたらと思います。

国内では一番大きなコンクールだと思います。緊張などはされましたか?

そんなにしなかったです。自分の一番好きな曲を一流のオーケストラの伴奏で、しかも大きなホールでたくさんのお客さんに聞いていただけるなんて、この状況を楽しむしかないと思いました。しかも最年少だったので、気負うことなく、ここまで来ることができたというだけで充分じゃないかなという思いでした。

コンクールに向けて、どういう準備をされましたか?

なるべく自分にストレスをかけないようにしました。ここまできたら練習もそこまで根を詰めてやらなくていいと思ったので、1日1回コンクールの曲を通して歌って、それ以外は極力声を出さないようにしました。背中が固まる作業はなるべく避けたり、睡眠時間をちゃんと確保したり、息抜きに、自分の好きな事をしたりしました。あとは、本番の1週間前からお肉を食べ続けました(笑)。

自分の好きな事、というのは具体的には?

アクセサリーなどのものづくりが好きなんです。ザ・女子という感じの(笑)。ものを作っている間は、余計なことを考えずに没頭することができます。

コンクールの曲は、どういう考えで選ばれましたか?

1次試験と2次試験は伴奏がピアノなので自分の好きな曲を持っていったのですが、本選では伴奏がオーケストラになるため、声の飛び方が重要になると考え、1曲目に、オケの編成が比較的軽いものを、そして2曲目では、オケの人数が1曲目の倍くらいになる曲を歌いました。1曲目で軽い曲、2曲目で重い曲を歌うことで、いろいろな曲を歌えることをアピールできるのでは、という考えもあります。先生と相談して選びました。また、オケの人数が2曲目で増えるため、その準備をしている間に、私自身も少し休むことができました。

コンクールの準備で苦労したことや大変だったことはありますか?

とにかくオケで歌えることが楽しみでしょうがなかったので、そんなに無いかな...ただ、季節の変わり目で寒くなり始めた頃だったのと、同じ時期に大学院のオペラの定期公演などもあったので、いくつかの本番をこなしつつ、体調管理を徹底しました。

次の目標は?

日本で最高峰のコンクールである程度の結果が残せたので、来年からは国際コンクールに挑戦しようと思います。プライベートでつくことのできる先生がウィーンにいるので、ウィーンを拠点に、願わくばそのまま向こうで仕事があればと考えています。

ここからは、もう少し横山さん自身についてのお話を聞いていきたいと思います。高校は普通科ということですが、中学生の時点ではまだ音楽の道に進もうとは考えていなかったということでしょうか?

そうですね。中学3年生くらいまでは他にやりたいことがありました。獣医さんになりたくて。他にもいろいろ。でも高校に進学して進路について考えた時に、自分が一番世の中で活躍できることはなんだろうと思って、「歌」かなと思いました。

もともと歌の勉強はされていたのですか?

はい。父親が声楽家なので、ずっと父にレッスンしてもらっていました。親子ということで声帯が似ているのか、アドバイスが的確であると感じています。ただ、「レッスンの時は父親じゃない。」と言われていたのですが、顔を見るとどうしても父親なので、なかなか気持ちを切り替えるのが難しい時もありました。今でも時々みてもらっています。声楽家の父のことは、本当に尊敬しています。

横山さんは、高校生の時も「全日本学生音楽コンクール声楽部門高校の部」で全国第一位を受賞されています。このコンクールはどうして受けられたのですか?

腕試しのつもりで受けました。私は高校が普通科だったので、音楽高校などに通っている同世代の人達がどのくらい歌えるのかを知るのが目的でした。それこそ気楽な感じで。先日のコンクールもですが、気楽なスタイルというのはいいかもしれないですね。結果、優勝して、当時の自分が天狗になるには十分なほど賞賛を受けてしまいました。

まさに「順風満帆な音楽生活」という感じですね。

いえ、その後の音大受験では、第一志望であった東京芸術大学に入ることができなかったんです。2回受験したのですが、どちらも落ちてしまい、天狗になっていた鼻を完全に折られた気持ちでした。そして東京音楽大学へ進学したのですが、そこは校風的にライバルが育つ学校だったので、それはそれでよかったなと思います。今は、やるべきことをきちんとやっていれば、どこの音大に進学しても問題ないなと思っています。

卒業後は、東京芸術大学の大学院に進学しました。芸大はみんながのびのびしていて、こんなに優しい世界があるんだと衝撃を受けました(笑)。校風の違いは非常に感じます。

これから音楽の進路を考えている方に、メッセージをお願いします。

音楽の道にいくにあたって、迷われる方が多いと思います。でも飛び込んでしまったら、中毒のように抜け出せないとも思います。それで悩むこともあるかもしれないけど、基本的には自分のしたい音楽に忠実に生きていたら、道は開けると思います。たとえ第一線で活躍することができなくても、音楽を通して感じたことや、音楽をやるために必要な感性など、そうやって育ったことは絶対にどこかで役に立つし、自分の心を豊かにすると思います。迷われている方はぜひ。つらいこともたくさんあるけど、失敗したとか、悩んだことが全部自分の糧になって、自分を強くしてくれます。私も頑張りたいと思います。

〜横山 和美(よこやま かずみ)〜

東京音楽大学音楽学部声楽演奏家コース卒業。在学時に明治クオリティオブライフ文化財団奨学生として研鑽を積む。第62回全日本学生音楽コンクール声楽部門全国大会高校の部第1位、並びに横浜市民賞受賞。第69回全日本学生音楽コンクール声楽部門大学の部全国大会入選。第86回日本音楽コンクール声楽部門第2位及び岩谷賞(聴衆賞)受賞。これまでにオペラでは第62回藝大定期オペラ公演《コジファントゥッテ》にてデスピーナ役、第63回同公演《フィガロの結婚》にてバルバリーナ役、ビゼー《カルメン》にてミカエラ役で出演。横山和彦、高橋修一、水野賢司、菅英三子の各氏に師事。現在、東京藝術大学大学院博士課程音楽研究科オペラ専攻1年次在籍。

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