吉田卓矢さん

2018-07-29

今回は、福島大学教育学部音楽科で作曲を学んだ後、東京学芸大大学院修了し、

現在フリーランスで活躍されている吉田卓矢さんにお話を伺いました。

音楽科への受験を考えたきっかけを教えてください

進学校に通っていたこともあり、周りの影響もあってはじめは漠然と理系分野の受験を考えていました。

しかし、周りに流され、なんとなく勉強していたため、模試の結果もついてきませんでした。このまま勉強を続けていても仕方ないと思っていましたが、そのままセンター試験を受験。

しかし案の定結果は芳しくなく、このままだと浪人確定、思い切って勉強を止め、専門学校や音楽系の大学の受験を考え始めました。もちろんセンター試験後に県外の大学に行きたいとは言い出せず、消去法的に県内で音楽科のある大学を探し始めました。探す中で福島大学の教育学部に音楽科があり、さらに電子音楽を専門分野とする作曲の先生がいることを知り、興味を覚えて受験を決意しました。

実技試験と筆記試験の二つから受験方法を選ぶことが出来たため、準備の間に合いそうな筆記試験で受験しました。ピアノで受けたものはピアノ専攻、フルートで受けたものはフルート専攻、など受験の時点で専攻が決まっていることを、大学入学後に知りました。自分は筆記試験での受験だったため、必然的に作曲専攻となったのです。



―――音楽自体はいつから始めたのですか?

四歳からピアノをヤマハではじめ、高2まで続けていました。中学では吹奏楽部に誘われましたが断り、パソコンで電子音楽や楽譜を作るなどしていました。高校に入ってから誘われてなんとなくチェロをはじめました。



―――直前の準備でしたが、受験に際し、どのような対策を?

ソルフェージュなどはなく、平易な楽典の試験、小論文、和声の三科目での受験でした。音楽科と言っても、あまり専門性が高い音楽科ではなく、教育学部に適した平易な問題でした。ただ、ヤマハではポップスばかりやっていたため、クラシックの和声に関してはわからないところが多かったので、受験に際し高校の音楽の先生に和声を習ったのですが、あまりに受験直前のため、「こんな直前に準備するなんてお前は音楽を冒とくしている!」とも言われました。しかし、ふたを開けてみたら、音楽科で一番の成績で合格でした。



―――それはすごいですね!ちなみに福島大学の実技とはどんなものがありますか?

ピアノ、楽器(何でも可)、声楽。大学に器楽の先生はひとりしかいないため、具体的な技術というより先生の感性で合格が決まる側面もあると思います。



―――福島大学音楽科の受験者の傾向を教えて下さい。

例えば高校でも音楽科の者、高校から合唱始めた者、中学生から楽器を始めた者など。専門性を高めたいというよりは、音楽を続けたいという気持ちの人が多いような印象がありました。福島大学以外でも、山形や宮城の教育大の受験を考える者もいました。通いやすさや住みやすさ、先生のよしあしや紹介などいろんな側面から考えての受験することが多いと思います。

―――受験科目の和声はどのように勉強しましたか?

和声を学ぶ者は必ずと言っていいほど使う芸大和声の赤い本を中心に勉強しました。最近新しく芸大から出た和声の本もあるが、結局赤い本がいいという声もあるようです。



―――受験に際して苦労したことはなにかありますか?

受験の情報や、大学の様子をすべて受験要綱や大学のHPから得ていたが分からないことが多く、今考えれば、大学に直接足を運んで、先生や事務の人に聞いた方が良かったと今考えれば思います。加えて、入学も東日本大震災のため一か月遅れ。大学のことがさっぱりわからないまま入学。何をやればいいか分からない宙ぶらりんの状態でした。

―――入学直後の印象は?

理工学部や教育学部などもある総合大学で、サークルなどで色々な学部の人と関わりをもちました。高校まではせいぜい1学年300人ちょっと。大学は人学年1000人。すごい人だなあと感心しました。

―――音楽科はどのような様子でしたか?

教育学部の音楽科は非常に少なく、1学年12,3人。教授は作曲、ピアノ、器楽、声楽、音楽教育がそれぞれ一人ずつ。加えて非常勤や特任教授などがいました。生徒に対する先生の数としては充実していましたが、先生と、専攻している分野が異なると苦労する学生もいたと思います。自分も作曲は現代音楽や電子音楽を専門に扱いましたが、もともとバンドマンになりたい気持ちや、JOCという自分で作曲して演奏するコンクールのようなものに出ていたこともあり、入学当初の作曲へのイメージは大きく違っていました。実際研究室に入ってみると、掃除機でものを吸い込んだ音がスピーカーから流れていたり、ピアノも弾くというより叩くような作品を作っているのを見て、こんな音楽があるのかと驚愕しました。極めつけは、何にも音を出さない曲が存在するらしい…わけが分からないと思いながらも、わけが分からないことに対する憧れや興味をもって現代音楽をやろうと決意しました。しかし、当時自分が持っていた作曲の語法としては、4小節や8小節ひとまとまりの音楽、AABAの形式、ブルグミュラーやバイエルのような曲を作るのが精一杯で、いきなり30分の曲を作れと言われても、さっぱり分からなかった。何にも知識がなかったので一から吸収していきました。

―――そのような状況からどのように打開していったのですか?

正確には打開できずに大学を卒業してしまいました。大学に入るまでは作曲がとても楽しかったのですが、大学入学後作曲が全く楽しくなくなってしまいました。先生にみてもらうには、ちゃんと考えて真面目な音を作らなきゃいけない。発表会などもありますが、和声や対位法もできず、研究室の先輩き聞いても、作りたいように作ればとしか言われず、どうしたらいいかわからないまま、大学も大学院も卒業してしまいました。本当に作曲できるようになってきたなと感じるのは最近になってからです。



――― 一通りやってから離れたことで見えてきたものもありますか?

人間関係を大学や大学院で作れたのはよかったと思います。未だに頼れる人がいたり、分からないことがあれば聞けたり。また大学では、声楽、器楽、ピアノ、音楽教育などの様々な授業を受け、視野を広くすることが出来ました。また困った時に誰に何を聞けばいいかが分かったことは大きかったです。



―――作曲の同期は他にはいたんですか?

作曲は自分ひとりだったので、先輩やOB/OGの方にとにかく質問しました。作曲専攻はそもそも志す人が少ないので、先輩たちもとても可愛がってくれたので、良い環境にあったと思います。



―――サークルではどんなことをやっていたのですか?

作曲の先生が学内の管弦楽団サークルの顧問をしていたので、誘われて見に行きました。高校3年間、なんとなくチェロを弾いていただけなので、交響曲もなんとなく知っているくらいで、作曲の先生が指揮をしている姿や、様々な楽器の音色を聞けることに魅力を感じ、先生の口車に乗せられて入ることにしました。作曲専攻としても、様々な楽器の音を肌で感じることが出来る機会を得られる、またオーケストラの作品を作る際にも人間関係が作れることは大きな魅力でした。実際はチェロを弾けるものが少ない、団員が少ないということではありましたが、入ってみて、指揮など沢山の勉強が出来ました。その傍らで、大学の軽音サークルでキーボードやドラム、ギターなどもやっていました。しかし作曲の先生にはなんとなく隠していました。特に厳しい先生ではなかったのですが、なんとなく先生はポップスが好きではないのかなあと勝手に思い込んでいて黙っていましたが、そのうちバレました。好きなことをやるのはいいが、作曲はちゃんとやれよ、あるいは、クラシックに拘らず、自分の得意なことで作曲してみたら、と言われ少し気持ちが軽くなりました。



―――他の音楽大学でもポップスを続けることに対して抵抗を感じる者もいるようですがどう思われますか?

大学のサークルもそうだし、ヤマハのプログラムもそうだが、クラシックとポップスのどちらも諦めず続けてきて、今の作曲のスタイルがあると思います。なので結果的にどちらも止めなくてよかったと感じています。自分は、器用貧乏というか、ひとつのことをやり続けることが苦手で、ピアノを練習していてもテレビで流れている音楽を耳コピし始めたり、エレクトーンもレッスンの練習をしていたはずなのにエレクトーンの機能をいじりはじめたり。大学に入ってからも、現代音楽作曲のために、チェロからどうにかして変な音を出せないか、ティンパニの上でスーパーボールを転がしたらどんな音が出るか、などとにかく子供みたいに、思うがままに動いていました。

―――音大受験や音楽科受験を迷っている方にメッセージありますか?

僕は教育学部を出ているので、音楽大学だけが選択肢では無い、ということを伝えたいと思います。教育大の音楽科をでも良いし、普通の大学のサークルで音楽を続けるのでもよいし、あるいは地域や一般の音楽団に入るのでもよい。ただ関わる人には気を付けた方がいいと思います。サークルや地域の団体に入ってしまうと、いつの間にか馴れ合いになってしまい、上を見なくなってしまうということがあると思います。自分よりずば抜けてできる人がいるところにいくべきだと思います。大学の研究室に殴り込みに行くのもよし、演奏会に行って奏者に話しかけたり。とにかく自分で環境を作っていくことが大切だと思います。その行動力を持てないという場合でも、先生や先輩の伝手を使ってみたり、あるいはSNSなどで自分がなにをやりたいか発信していくことが大事だと思います。何をやりたいかが明確になっていれば、力を持っている人たちはなんとでもできる。とにかく発信することが大事だと思います。

―――どのように発信していくのがよいでしょうか?

何も考えなしにSNSでつぶやいても、なにをやりたいか分からなくなってしまったり、結局慣れ合いになってしまう可能性がある。例えば自分の演奏を動画であげてみたり、ブログにまとめてみたり。音楽をこれからも続けていきたい人は、最終的にこれからもなにかをアウトプットしていく人になるわけですよね。演奏にせよ、作曲にせよ。若いうちからアウトプットする癖をつけておくことが大事だと思います。普段からの発信がすごく大切だと思います。

 

―――受験生の皆さんに最後に一言お願いします。

今自分がやっていることは、すべて過去からの延長線上にあります。一瞬無駄かなと思ったり、何に役立つんだよと思ったりすることもあると思います。勉強するときも因数分解などが今後の足しになるのか?と考えることがあると思います。でも、そういう人生において一瞬無駄だと感じていたことが今になってつながってきている実感があります。塾講師のバイトや教育実習などもろもろの積み重ねがあって小学校の先生をしたり、また中学の時のパソコン部での経験があって、パソコンで楽譜や音源を作る仕事につながったりしています。勉強でもそうじゃなくても、無駄だと思うことは色々やっていった方がよいし、趣味があるなら全力を尽くした方がいいと言いたいです。音大を受験するということで視野が狭くなるのではなく、常に視野を広げチャンスをつかんでいくことが大切だと思います。