neumo 特集!

2018-11-27

今回は、普段とは少し毛色が変わって、「株式会社neumo」さんのインタビューの様子をお届けします。

neumoさんは、「音」と「脳神経科学」の関連する領域で研究をしているベンチャー企業で、音楽家のみなさんにとって、もしかすると革命的になるかもしれない製品開発を行っています。

もともとは、有名コンサルティング会社の株式会社ビービットの創業メンバーでいらっしゃいますね。
どうして、この「音」と「脳神経科学」という分野で再び会社を始められたのですか?

「音」と「脳神経科学」を組み合わせることは、創業当時は考えていなかったんです。

もともとはというと、コンサルティング会社の方でテーマとしていた「人間理解」を極めたいと思って、ビービットの研究開発部門の方で、ベンチャーキャピタルをアメリカに作ったんですね。

そこで色々投資をしているうちに、ニューロサイエンスに興味を持って、学会に顔を出すようになりました。

日本国内の有名な研究者はなかなか新興企業は相手にしてくれないんですよね。

反対に、イスラエルやMITの最先端の研究者に会うとみなさん優しくて、研究にもすぐに協力してくれました。

日本国内ですごく苦労したお陰で世界に出ようと思えたので、結果オーライかもしれません。

そんな経緯でニューロサイエンスにどっぷり浸かっていたら、会社のもとの事業とは距離もでてきたので、去年の9月に新しい会社を立ち上げました。

「音」についての研究を始めるきっかけは何でしたか?

ある企業との共同研究で「何か新しいものでやりたいね」となって考えていたところ、思いついたのが音でした。

きっかけは、たまたま今まで読んだ論文で音楽系の論文があったのと、僕が子どもの頃にヴァイオリンを習っていたことでしょうか。

もともと音楽をなさっていたんですね。

はい、結構いろんな楽器をやっています。

あるときオスカー・ピーターソンというジャズピアニストの演奏を表参道で聴く機会がありました。it’s impossibleという曲なのですが。

冒頭は穏やかなのですが、だんだんと超絶技巧の曲になっていくんです。

でも最初の旋律を聴いているから、どれだけ激しくなってもとにかく綺麗なんですよね。

そうしたら気持ち良すぎて、そのまま表参道で走り出してしまって(笑)

これを自分で弾けないのはもったいないなと思って、ジャズピアノを習い始めました。

演奏を聴いた衝撃から、レッスンに通うとは、物凄い行動力ですね!

他にも5年前に阿波踊りをやるのに篠笛を習って、そのうち歌舞伎の先生について、《岸の柳》とか《黒髪》という古典の曲を吹いたりしました。

あとは、尺八も音が綺麗だなと思って、習いました。

僕の先生は尺八でレディー・ガガの曲を吹いた動画をアップして100万再生されている方です(笑)

このように音楽を色々やってる中で、音楽で耳を鍛えるとCNNの英語がよく聞き取れるようになったり、逆に英語をやっていると音楽が注意深く聞き取れるようになったり、そういう経験をしました。

色んなイヤホンとかオーディオの性能も良くなっていますが、それに何百万も出すんじゃなくて、本当はもっと脳の側を鍛えたほうがより音楽っていうのは楽しくなるんじゃないかなと思って。

音楽家の人はふだんからそれをやっているんだと思いますが、一般の人でも音への感受性が上がるようなノウハウがあるとといいなと思って。その元になるような理論とか応用方法というのは頭にあったので、じゃあやってみるかということになりました。

若林さんはSNSで海外の研究事例などを日々紹介されていますね。

はい。

僕自身、露出するのは苦手なのですが、アカウントの開設から毎日発信するようにしています。自分でこの分野の研究情報を集めてかなりの数を読んでいます、いまは論文の供給のほうが間に合っていません(笑)。

当社のブログの音楽系の記事は玉越が上げていますが、例えばこんな記事があります。

「プロの演奏家の創造性は、運動野への電気刺激で引き上げられる」というものです。

http://www.neumo.jp/2018/10/19/

「運動野(motor cortex)の刺激によって、音楽演奏を活性化させることができた」(The Brain on Art: Auditory, Visual, Spatial Aesthetic, and Artistic Training Facilitates Brain Plasticity - Scientific Figure on ResearchGate. Available from: https://www.researchgate.net/Auditory-Motor-Interactions-During-Musical-Performance_fig9_324087226 [accessed 5 Nov, 2018])

運動野というのは運動の指令を出すところで、そこに刺激を与えることで、指令を出すことがスムーズになるんでしょうね。

創造性というか、運動のしやすさに影響があるということです。

結構強烈な実験ですね…。他に注目されているホットな研究はありますか?

そうですね…先日講演でもお話ししたのですが、「ニューロフィードバック」はいまかなりホットかと思います。

タルマ=ヘンドラーという人が有名な研究者なんですが、自分の脳の状態を自分でコントロールするというものです。

例えばPTSD(注)の人は扁桃体というところが活性化してしまっているのですが、それを抑えるのをVR(ヴァーチャル・リアリティ)を用いてやったりします。

※強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるもの。

例えば、強盗に遭った銀行員のPTSDの場合では、銀行を忠実に再現したVRをゴーグルを被って見るんですね。

沢山の人が待っていて怒っている、それをどうにか座らせるというような、実際に近いようなシチュエーションにVR上で繰り返し触れてもらうことで、安全な状況のなかで、恐怖の対象に慣れていってもらうことができます。

「VRヘッドセットを使えば、怖いシチュエーションに慣れさせて、扁桃体を落ち着かせることができる」(Virtual Reality Exposure Therapy for Posttraumatic Stress Disorder of bank employees: A case study with the virtual bank(2017))

使っているのは動画と、あとは脳波計ですね。自分の脳波の値が下がるように、自分でコントロールします。

同様の方法でうつ状態から平常の状態にコントロールしたりとか、ちょっと怖めの実験でいうとなんの感情も持っていないものを好きにさせたり、ある色を違う色に見せたり…。

もちろん完全にとはいきませんが、どちらかというとこの色、といった具合にはなります。

他にも最近読んだものだと、利根川進先生の研究なんですけど、仲の良い異性をもったうつ病のマウスをつくるんです。

そして異性と仲良くしていたころの記憶がある海馬の部分を刺激してあげると、うつ状態が緩和するというものです。

なんだかSFみたいな話になってきました。「音」のジャンルに絞るとどうでしょう?

聴く機能の差についての研究なのですが…。

楽器の練習は読解や語学に関係する子供の聴覚機能を改善する

http://www.neumo.jp/2018/10/18/

3歳までに聞く単語の数が、上流階級の子と下流階級の子だと、約3000万語も差があるそうです。

単語数以前にも、線路の横や道路の近くとか、質の悪い住宅だと騒音があったりしますよね

対してお金があると高台の静かなところに住んでいて、周辺環境にも差があります。

実はそうしたことから、聴覚にも差が生まれてしまっているという研究結果があります。

FFRという脳幹由来の脳波から分析すると、音節に沿って音を理解できるかという能力に、上流階級と下流階級の子で差があるんです。

ヒトは最初は知らない単語も、音節に分解して、うまく意味を見つけて覚えようとするので、そもそも音節が聞き取れないとなると言語習得が遅れてしまいます。

しかし音感の養成などが終わった以降でも、そういった下流階級の子にまとまった時間の音楽教育を受けさせると、FFRの値が正常に戻るという研究結果が出ました。

音楽で脳を鍛えることができて、それがいろいろな能力に役に立つというのは、音楽教育に色んな可能性を感じる話ですね。

聴覚野の皮質というのは、筋トレのように鍛えて厚くすることができるんですよね。

ブレインテックをビジネスに活用するというのを企業向けに沢山講演していますが、こういう話ももっとしていきたいですね。

実は今この会社では、これに関連して、音感を上げるトレーニングを開発しています。

「耳の中には、音のHz帯(高さ)ごとに反応する細胞が並んでいます」(https://www.open.edu/openlearn/science-maths-technology/science/biology/hearing/content-section-3.7)

音を処理するのに脳がどうなっているのかな、っていうのに僕はすごく興味があって。

音って、その単体の音をどう聞くのかじゃなくて、音と音の移り変わりが面白いじゃないですか。

そういうのを含めたうえで、ソルフェージュでこういう音とこういう音を聞き分けたほうがいいというのを、脳の理論から逆算して研究していけたらいいですね。

音楽が楽しくなるようなことにつながる、物理的な特性を踏まえたうえでトレーニングをすると効果が上がるのかなと思っているんです。

でも、実験の詳細は企業秘密なので、あまり詳しいことは言えません(笑)。

残念!でも今、実際にこちらの実験に参加してくれる方も募集されているんですよね。

はい!

複数回の実験のなかで能力がどう向上するか調べさせてもらっているので、時間としては若干長くはなるのですが、絶対音感のある方だったり、プロのミュージシャンの方でも、意外に音感に穴があったりするんです。

参加しているご自身にとっても、興味深い結果が出てくるのではないかと思います。

面白そうですね!自分も実験に参加してみようかな…。

いかがでしたか?

音楽界に変化をもたらすような研究を進めている「株式会社neumo」さん、今後の研究開発やリリースにもますます注目です。

なお今回のインタビューでも話題に上がった通り、実験に参加してくれる方を募集中です。ご興味のある方は以下の募集要項をお読みになり、neumo 玉越さん(facebook.com/tamakoshihirokiからメッセージを、またはhiroki.tamakoshi@neumo.jp)までご連絡くださいね♪(音大ナビでは実験に関する責任の一切を負いかねます)



【募集要項】

  • 演奏や歌の上達につながる、音感を高める実験です。

  • 脳波計を装着しながら、パソコンで簡単な作業をしていただきます。1回90分~2時間で、合計5回(5日)の参加をお願いします(初日だけ2時間かかります。2日目以降は短くなります)。

  • 謝礼は1回(1日)あたり3,000円(交通費込み)

  • 期間:2018年年内いっぱいまで、連続した10日間の中のどこかで5日間お越しいただける方

  • 時間:平日は9:00 - 22:00、休日は10:00 - 20:00

  • 場所:東京都渋谷区渋谷1-17-1 TOC第2ビル3F(https://www.hituji.jp/portal/guide/access.html)

  • 参加できない方:目が見えない方

  • 連絡先:neumo 玉越(facebook.com/tamakoshihirokiからメッセージを、またはhiroki.tamakoshi@neumo.jpへご連絡ください)

最大級のオンライン音大受験スクール

受験準備は、スマホ1つで始められる。

「あこがれの音大受験の準備をしたいけど、一体いつから何を始めればいいんだろう…」と困っていませんか? フォニム スタディは、国内最大級のオンライン音楽教室がお届けする、予備校通学なしでスマホから音大受験対策がはじめられる講座です。 圧倒的にわかりやすい映像授業だけでなく、トップ音大卒・在籍のコーチが、心強いアドバイスや勉強計画であなたの受験準備をサポートします。