
第1回 気軽にオペラシリーズ《コジ・ファン・トゥッテ》
2018-08-21
こんにちは。
音大ナビ公式ライターの本多都です。
さて、突然ですが皆様は「オペラ」を見に行ったことはありますか?
「難しそう」「敷居が高い」「正装しなきゃいけないんでしょ?」
なーんて思ってます?
もうね、
そういうの
いいですから!!!
オペラはカジュアル?
確かに、オペラはそもそも日本語じゃない作品がほとんどですし、もともとが貴族の娯楽だったゆえに、ドレッシーな方々が「おほほほほ」とか言いながら見てそうですよね。え、そこまでは思ってない?
とりあえず、今となってはそのような時代は過ぎ去り、現在はかなりカジュアルにお楽しみいただける文化となりました。
オペラに出てくる曲を抜き出して演奏するコンサートでは少ないですが、オペラ作品をまるごと上演する際は、たいてい字幕があるので、言語の問題はクリアされていると思います。だって皆さん、字幕映画などは普通に見ますよね?それと同じです!
服装に関しても、そこまで気張らなくても大丈夫です。デートをはじめ、ちょっとお洒落して出かける日ってありますよね?そのくらいの感覚で全く問題ありません。長時間の観劇になるので、リラックスできる服装の方が作品にも集中できます。
...なーんてことをつらつら書いても、興味がない人にはとことん伝わらないだろうな~と思いましたので、数あるオペラの中でも特にコメディよりなオペラを、あらすじをはじめ、あらゆるところにツッコミを入れながらご紹介していきたいと思います!
「え?オペラにツッコミとかしていいの?」
いいんです。オペラって音楽を重要視するあまり、お話は案外ツッコミ所満載だったりするのです。
「え、この内容で2時間30分もあるの?」みたいなことはザラです!
それでは、はりきっていきましょう!
モーツァルト作曲
《コジ・ファン・トゥッテ》
いきなりカタカナです。はいはいちょっと待って逃げないで。
邦題もちゃんとあります。最もメジャーなのは《女はみんなこうしたもの》でしょうか。ほう、女性が一体全体なんだって?という気になりません?
そのストーリーですが...これは女性の皆さんはちょっとムッとしてしまうかもしれません。
『女性の貞節を試すために、2組のカップルの男性2人が、変装してお互い逆の相手を誘い、女性は2人ともそれになびいてしまう...』
といったお話なのです!!ひどい!!女性をみんなそうだと思わないで!!
...とまあ、世の中の多くの女性を敵に回しそうなお話ですが、実は徹底した喜劇、コメディです。
そもそもなぜこんな茶番(笑)を繰り広げるのでしょうか。
まさかの「賭け」
まず物語が始まると、軍人のフェランドとグリエルモが、自分たちの彼女のことをそれはそれは自慢しているのです。カフェで高らかに。え、なにこの人たち恥ずかしい...
でもまあ、それだけなら微笑ましいじゃないですか。ああ、自分の彼女のこと大好きなんだなって。
でもそこに茶々を入れてくる男がいるのです...
貴方のことですよドン・アルフォンソ!
2人が自分達の彼女の貞操を信じているのに、「そんなものは存在しない。」と一蹴するアルフォンソ。言い返す2人。そして最終的に、「大金を賭けて彼女達の貞操を試してみよう。」となるのです。ちょい~、勝手に話進めちゃっても~~
そして場面は変わり、彼氏を待つフィオルディリージとドラベッラの二人が登場します。(フェランドの彼女がドラベッラで、グリエルモの彼女がフィオルディリージです。)ちなみにこの二人は姉妹です。(明確に言及されてはいませんが、フィオルディリージを姉、ドラベッラを妹とする演出が多いです。)
この姉妹も、登場していきなりお互いの彼氏を自慢し合います。似たものカップルかよ。
そして手相占いとかしちゃって、「今日は何かが起こるかも...結婚する日が近いのよ!!」なーんて盛り上がってます。可愛い...
そこへ現れるドン・アルフォンソ。
基本的にアルフォンソが登場するとろくなことがありません。
アルフォンソは泣き出し(演技派)、姉妹に伝えます。
「国王の命令で、フェランドとグリエルモが戦争に行くことになった。」と。
皆さん大丈夫ですか?お気づきですよね?
もちろん嘘です!
これがアルフォンソの提案した賭けの方法です。恋人達が出征でいなくなった後も、彼女達は待ち続けられるのかどうか...というもの。
この段階では、姉妹はもちろん悲しみにくれ、泣きながら恋人達と別れます。
これにはフェランドとグリエルモもニッコリ。
しかしアルフォンソは余裕たっぷりで、2組のカップルが別れを惜しみながら歌っている時も、「笑いが止まらない。」とコッソリ歌っているのです。なにわろてんねん。
そうして彼氏の2人が去った後、姉妹とアルフォンソの3人で、彼らの無事を祈る3重唱を歌います。アルフォンソも歌うんかい。
でもこの3重唱が...
べらぼうに美しいのです...!
本当にこの3重唱はこの世の奇跡です。美しさの暴力。モーツァルトほんとありがとう。
もう一人の曲者登場。
さて、これでもうこのオペラ終わりでいいんじゃない?と思えるくらい美しい3重唱のあとは、場面が変わり、アルフォンソと同じく曲者であるキャラクターが登場します。
姉妹に仕える女中、デスピーナです。
登場していきなり、女中の仕事に対する不平不満をぶちまけます。
そこへ姉妹が泣きながら登場。何も知らないデスピーナが朝食のチョコレート(優雅)を勧めると、ドラベッラは激怒。デスピーナちゃん、とんだとばっちりです。そりゃ女中業に嫌気もさしますね。
その後、姉妹がデスピーナに事情を話しますが、デスピーナは気にも留めません。男なんて何人もいるのだから、もし戦死したら、それはそれで結構だ、と。す...すごい...
そんなデスピーナですから、アルフォンソが放っておくわけがありません。お金を渡し、デスピーナにも今回の賭けの仕掛け人になってもらいます。
(これも解釈や演出によって変わりますが、筆者は個人的には、デスピーナとアルフォンソは昔何かあった説を支持してます。いいコンビなんですよこの二人!)
そしてアルフォンソは、変装したフェランドとグリエルモを招き入れます。
騒ぎを聞きつけた姉妹二人は、屋敷に見知らぬ男性がいることに大激怒!
ここで6重唱が展開されるのですが、この曲すごいんです。変装した彼氏2人のパートと、怒る姉妹のパート、そこにデスピーナのパートとアルフォンソのパートが加わって、しっちゃかめっちゃかになりそうなのに、絶妙なバランスで絡み合い、最高のアンサンブル曲となっているのです。筆者の最も好きな重唱曲の一つです。
最初は警戒する姉妹。
さて、突如現れた見知らぬ男性に、姉妹は警戒心マックス。アルフォンソは「彼らは私の友人だ。」と説明しますが、口説いてくる男性2人を姉妹はキッパリとはねつけます。
特に、姉のフィオルディリージが「自分の心は岩のようで、決して動くことなはい。」と歌う大アリアが、それはもうめちゃくちゃかっこいいのです!
実際、この曲を好きな人は多いです。もし好きなオペラアリアを聞かれたら「Come scoglio(コーメ スコーリオ)」と答えると、お?と思われるかもしれません。
その後も負けじと男性達はアタックを続けますが、姉妹は一切なびくことはなく、部屋を出て行ってしまいます。
賭けに勝ったことを確信し、大笑いする彼氏達。それに対して「静かに!」となだめるアルフォンソ。
この三重唱もすごいです。笑い声が見事に歌になっているのです。モーツァルト天才かよ...(天才です。)
賭けに勝ったと喜ぶ二人に対し、まだ早い、明日の朝までは私の指示に従うようにとアルフォンソ。二人は「軍人は約束を必ず守る。」と軽くいなし、特にフェランドは満足して、「愛のそよ風は私に安らぎを与えてくれる。」なーんてロマンチックに歌っちゃったりします。気が早いぞ!(でもとってもいい曲です。)
さて、操の固い姉妹の心を揺れ動かすため、アルフォンソはデスピーナと相談して次の作戦に移ります。
次の作戦はなんと!変装した彼氏2人に毒薬を飲むフリをさせ、、嘘の自殺を図ろうとさせるのです!
この一連の騒動が、このオペラの1幕フィナーレを飾ります。死んだふりをする彼氏達...気が動転し、脈すらうまく測れない姉妹(落ち着け)...医者に変装したデスピーナの登場...嘘治療で復活する男達...とまあ、先ほどの6重唱以上のドタバタです。演出にもよりますが、変装したデスピーナの登場シーンには思わず笑いが起きることもしばしば。
この、「振り向いてくれないなら死んでやる!」という男達の行動が、姉妹の心を動かすきっかけとなるのでした。(ちょろい)
こんな感じで1幕は終了します。
め...
めっちゃ長くなってしまいました!汗
つ、つまり!1幕だけでこの文章量になってしまうくらい、このオペラにはツッコミ所が多いということですよね!!
ほら、ちょっと見たくなってきませんか?面白そうじゃないですか??
だってこれを全て歌で展開してるんですよ!!
次回は後半戦、2幕について書いていきたいと思います。
2幕はいよいよ姉妹の心に変化が現れます。またしてもツッコミ所満載なのでしょうか?
こうご期待!
(余談ですが、実はこのオペラ、あの有名な漫画「のだめカンタービレ」にも出てきます。千秋先輩の元カノ「多賀谷彩子」のエピソードです。峰や真澄ちゃんといった主要キャラクターと比べると印象が薄いかもしれませんが、結構いいシーンなんですよ♪気になった方は、そちらもぜひ読んでみてくださいね。)