
第2回 気軽にオペラシリーズ《コジ・ファン・トゥッテ》
2018-08-22
こんにちは。
音大ナビ公式ライターの本多都です。
前回、「気軽にオペラを見に行ってほしい!!!」という思いから、オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」を、ひたすらツッコミを入れながらご紹介する、といった記事を執筆させていただきました。
今回はその後半戦です。
1幕フィナーレで、新しい男達のことが気になり始めた姉妹...
はたしてどうなってしまうのでしょうか!?
(ちなみに、結末までガッツリ書かせていただきました。オペラは結末がわかっていても十分楽しめるジャンルであるというのが筆者の考えですが、どうしてもネタバレを避けたい方は、この記事は読まれない方がいいかもしれません。)
妹はちゃっかりもの?
2幕は、姉妹とデスピーナの会話から始まります。
「恋を気まぐれに楽しみましょう!」
と、デスピーナは新しくきた男達と浮気をすることを提案しますが、姉のフィオルディリージはそれをひたすら断り続けます。
ここで注目してもらいたいのが、妹のドラベッラ。
ドラベッラも反論はしているのですが、フィオルディリージに比べると、どうも口数が少ないように感じられます。
これはあくまで筆者の考察ですが、デスピーナの提案に従い、ドラベッラが新しい恋に向けて気持ちが変化している様子を描いているからなのではないでしょうか!ワオ!!
これ姉妹あるあるだと思うのですが、妹の方が恋愛事に対してドライというか...ちゃっかりしている傾向があると思うんですよね。このオペラも本当にそれを感じます。
少し話がそれましたが...最後はデスピーナが「女も15歳になったら、いろいろな手練手管を身につけなきゃ。」と歌って去っていきます。え、15歳でその領域に達していないとダメなの?さすがですデスピーナ先輩...(もちろん18世紀なので、今よりも結婚年齢などいろいろ早いですが、それにしても15歳かぁ...)
姉妹の本音は?
デスピーナがいなくなった後は、姉妹2人で本音会議です。
さんざんデスピーナに説得された後のため、フィオルディリージも不安になったのでしょうか。ドラベッラに尋ねます。「あなたどう思う?」
皆様もう予想はつくと思いますが、ドラベッラは案外デスピーナの提案に乗り気ですので、「悪くないんじゃない?」と返します。さらにさらに、2人の男性のうち、どちらの方がタイプ?なんて恋バナに発展していくのです!ドラベッラが「黒髪の方がタイプだわ。」と言うと、「私はブロンドの方が...」とフィオルディリージ。えええお姉ちゃんまで!しかもお互い、元の恋人とは逆の方を選んでしまいました!!!
そうして、「気晴らし、あくまで気晴らしだから...」という理由で、姉妹は男達と庭で会うことにします。
お庭でのダブルデート
2幕ではこのシーンで初めて彼氏2人が登場するのですが、ここで2人が歌うデュエットがそれはそれは綺麗です。
こんな美しい歌を聞かされたら、筆者だって心が動いてしまうかも...そんなレベルです。
そうして、ついにダブルデートがはじまります。
しかし最初は、まさかのお互い無言!メンズ達よ、1幕の勢いはどこへ!?
姉妹、遊んでみるんじゃなかったの!?ピュアかよ!!(ピュアです。)
無言は気まずいので、お互いなんとかポツリポツリと会話を始めますが、たどたどしいうえに、話の内容も天気や景色の話で...このあたり、まさにコミュ障大爆発といった感じで妙にリアルです。
気まずい雰囲気に耐えられなかったのか、はたまた二人きりになりたかったのか、フィオルディリージはフェランドに、奥の小道へ行くことを提案します。立ち去る2人と、残される2人...
グリエルモが動き出す
ここで残されたグリエルモは、ついにドラベッラに仕掛けます。それはそれは猛アタックです。「あなたが好きすぎて死んでしまう。」だの「あなたの瞳には毒がある。」だの...聞いているコッチが恥ずかしい~
はじめのうちはドラベッラも上手にあしらっていましたが、ここでグリエルモは最終兵器、「ハートのペンダント」を取り出します。え、ハートのペンダント?
そんなものでドラベッラを落とせるの?と思うのですが、これがまさかの効果てきめん。
ラブラブのデュエットを歌い、2人はどこかへ去っていくのでした。あらら...
まあ、ドラベッラに関してはフラグがしっかり立っていましたからね。
対するフィオルディリージは
そして場面は変わり、今度は姉のフィオルディリージとフェランドの様子が展開されます。
何やら緊迫している様子...
フィオルディリージは新しい男遊びに踏み込んではみたものの、怖くなってしまい、フェランドを拒否しているのです!偉い!(と思いますよね?)
アタックを続けるフェランドですが、ついに根負けして立ち去ります。
その後、一人になるフィオルディリージ。
そして吐露するのです。
実は新しい恋が芽生え始めていることを...!
えーーーーー!お姉ちゃんまじか!!!
そしてここでも大アリアが歌われます。
「許してください、愛しい人(グリエルモのこと)よ。」と。
新しい恋の芽生えを認め、グリエルモへ謝り、でも誘惑に打ち勝ってみせる、という決意を表明した後、少しでも心が揺らいでしまった自分自身を責める...といった曲です。
1幕で歌った大ナンバー「Come scoglio(岩のように動かず)」に比べると、一見地味に思えるかもしれませんが、こちらも極上に美しく、そしてめちゃくちゃかっこいい曲となっております。ぜひ聞いてください!!!(Per pieta ben mio perdonaという曲です。)
第一回結果報告会
さて、アリアが終わりフィオルディリージが立ち去ると、場面は変わってフェランドとグリエルモの二人。
お互いに進捗を報告し合います。
フェランドはフィオルディリージがいかに誠実だったかを報告するので、グリエルモは上機嫌です。
しかし一方のグリエルモからの報告は...ドラベッラがフェランドを裏切ったという事実。
フェランドはもう、めちゃくちゃショックを受けます。1幕で早々に「愛のそよ風は~」なんて歌ってた時との対比がエグいです。
そこでフェランドを慰めるべく、グリエルモは熱唱します。
「女性達よ、弄びすぎだぞ!」と。(主語が大きくない?ひどくない?)
その後フェランドは、復讐してやる!!と一度は憤りますが、しかし結局はドラベッラのことを愛していると歌います。(すごくいい内容なのに、カットされることも多いこのナンバー...勿体ない...)
さて、勝利を確信しているグリエルモですが、賭けは明日の朝まで...ということで、まだ勝負は終わっていないのです。(というか、ここまでの一連の出来事が一日のうちに起きているなんて...心変わり早すぎでしょ姉妹...)
そしてフィオルディリージも
場面は変わり、女性3人によるガールズトークが展開されます。新しい恋人にノリノリのドラベッラと、それを祝福するデスピーナ。そんな二人を責めるフィオルディリージ。しかしフィオルディリージも、実は新しい恋をし始めていることを打ち明けると、デスピーナとドラベッラは大はしゃぎします。この二人には打ち明けるべきじゃなかったよお姉ちゃん...そしてドラベッラは「恋は小さな悪戯っ子みたいなものだから、自分の気持ちに正直になりなさい。」と歌いあげ、デスピーナと立ち去ります。
その後フィオルディリージは、誘惑に打ち勝つため、グリエルモの軍服を着て戦場にいく決意をします。
しかしそこへフェランドが登場!剣を抜き、「私を捨てるなら殺して下さい」と剣先を自分の胸に向け、フィオルディリージの前に跪きます。ここでのフェランドの音楽がまた卑怯で、情熱的に歌ったかと思えば、甘い旋律を繰り出したりと、駆け引きがすごいのです。だからでしょうか、フィオルディリージもついに陥落します。あちゃー...
絶望の第二回結果報告会
この結果に絶望する彼氏2人。そしてアルフォンソは説くのです。
「Cosi fan tutte.(女はみんな、こうしたものだ。)」と。
タイトルをここで回収です!ちなみにこのフレーズにつけられているメロディは、このオペラの序曲でも登場しています。ある意味、伏線回収を音楽でやっているのです!というか、だから主語が大きいって!女性がみんなそうだと思わないで!!泣
さて、賭けはアルフォンソの勝利となりましたが、まだ姉妹へのネタばらしが残っています。
ここもいちいち大掛かりで、なんと嘘の結婚式をあげさせてしまうのです。
こんな賭け事に召使をフル動員して...はわわ...
しかもみんな、お祝いの歌まで歌ってくれます。うぅ...やさしい世界...
結婚式スタート。そして...
二組の花嫁花婿が登場、続いて結婚公証人も到着し、結婚式が始まります。
実はこの公証人、またしてもデスピーナが変装しているのです。
そして全員が結婚証明書に署名をすると、遠くから軍隊の合唱が聞こえてきます。え、軍隊?アルフォンソが様子を確かめると、「大変だ!フェランドとグリエルモが戻って来た!」と叫びます。あああ修羅場...
とりあえず花婿たちを別の部屋に隠し、姉妹は途方に暮れます。
そこへ、変装を取った、もとの軍服姿の二人が現れます。王様の命令が取り消されたのだと。しかしこの場の雰囲気がおかしいことに気づき(気づきも何も知っているのだけど)、結婚証明書を見つけ、姉妹の裏切りを責めます。姉妹は、「悪いのは私たちです。殺して下さい。」と歌います。ここのハーモニーがあまりにも美しいので、彼氏達は姉妹のことを許す気になったのかもしれません。彼氏二人は別室に入り、先ほどまでの変装姿で再び現れ、ネタばらしをします。
アルフォンソは、「盲目の愛による勘違いは、正した方がずっとよくなるのだ。」とその場を丸く収め、最後はハッピーエンドで幕が下ります。(演出によっては、音楽や歌詞はハッピーエンドであるにもかかわらず、カップルが和解をしない解釈もあります。)
これだけドタバタしていたのに最後はこんなにスッキリ終わるのかよー!と思われるかもしれませんが、ある意味で教訓めいてるといいますか、シンプルな愛の話であるからこそ、現代の私達にも共感できる部分があるのかもしれません。
実際、「内容が不道徳である。」として評価の低かった19世紀よりも、20世紀に入ってからの方が再評価されています。モーツァルトや台本作家のダ・ポンテは、時代を先取りしすぎたのかもしれません。
長くなりましたが、2回にわたって、物語にツッコミを入れながら、オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」のご紹介をさせていただきました。
これだけ書きましたが、まだまだ書ききれていない見どころなどはたくさんございます!
どうですか?面白そうじゃないですか??
興味がわきましたら、ぜひご観劇いただければと思います。
もちろんDVDもたくさん出ていますので、劇場まで足を運ぶ時間のない方はこちらもぜひ!