
本編 クセがすごい?上演時間の短いオペラたち
2018-08-24
こんにちは。
音大ナビ公式ライターの本多都です。
前回、「序章 クセがすごい?上演時間の短いオペラたち」を執筆いたしました。今回はいよいよ本編になります。
オペラの平均上演時間は約3時間前後ですが、今回取り上げる作品は、どれも2時間かかりません!
張り切っていきましょう!
まずはこちらの作品!
シェーンベルク作曲《期待》
上演時間:30分
短い!驚きの短さです!!
探せばちゃんと短いオペラもあるのです。
さて、ではストーリーは...
『女が一人、夜の森をさまよいながら恋人を探している。そして最後には、恋敵の家の前で、殺された恋人の死体を発見する。』
怖すぎかよ。
短さに気を取られて忘れておりましたが...そうでした。このオペラはなかなかにグロテスクなのでした。
厳密に言及されているわけではありませんが、恋人を殺したのはおそらく「女」でしょう。浮気をされてカッとなって...といったところでしょうか。痴情のもつれ怖い...
しかもこのオペラ、登場人物はこの「女」一人なのです。特殊すぎか。
「女」の狂気が存分に表現されているがゆえに、音楽も当然不気味。
一人で全てを表現しなければならないため、この作品を歌う歌手は当然、表現力や演技力が高いです。
歌詞も比喩的表現が多く独特なので、考察勢はそそられるものがあるかもしれません。
そういった中毒性がある危険なオペラなのです。見るときは注意しましょう。
一発目からパンチのある作品紹介になってしまいました...
次こそはオーソドックスな作品を!
ベルク作曲《ヴォツェック》
上演時間:1時間35分、休憩無し
先ほどの《期待》よりは長いですが、2時間かからないというのはやはり魅力的ですね。そしてストーリーは...
『貧しい床屋上がりの兵士「ヴォツェック」が、鼓手長と通じた内縁の妻「マリー」を殺すという陰惨な内容の物語』
うーーーーーーーーーん!!!!!
そうでした...ヴォツェックはこういう話でした...
なぜだ。なぜ立て続けに悲惨な話が続くんだ?
しかもこれ、フィクションではなく、実際に起きた事件をもとに原作の戯曲は書かれているそうです。ひえぇ...
当然結末は残酷ですし、誰も救われません。
ヴォツエックの不安定な精神状態を音楽で巧みに表現しているが故に、全体を流れるムードは常に陰鬱で、しかも耳なじみは決して良いといえない...
だからこそ、時々表れる耳なじみの良いフレーズが、聞いている私たちにつかの間の安心感を与えるような、与えないような...
ほんとにクセは強いですが、筆者は割と好きです(笑)。
観劇の際に同行者をお連れになる場合は、こういうお話でも楽しめる方を連れて行きましょう。
それにしても暗い話が続いてしまいました...
そうだ、踊りとかあればいいかもしれません!
踊りのあるオペラ、ありますよ!
シュトラウス作曲《サロメ》
上演時間:約1時間45分、休憩なし
うんうん、タイムもまずまずです。そしてストーリーは...
『妖しい美しさで、王であるエロドの心を奪って離さない王女サロメ。宴の席で、7つのヴェールの踊りと引き換えに、預言者ヨカナーンの生首を所望する。』
NA MA KU BI
あまりのパワーワードに、思わずローマ字を駆使してしまいました。失礼いたしました。
原作は新約聖書をもとにしたオスカー・ワイルドの小説ですので、ご存じの方も多いかもしれません。
お察しのとおり、全然明るい話ではありません。
妖しく、そして官能的なオペラです。7つのヴェールの踊りは、最近ではサロメ役の歌手が実際に踊る演出が多く、見せ場となっています。
歌手なのに踊りも要求されるとは...とんでもないオペラです。
そして筆者の個人的推しポイントは、サロメのヨカナーンに対する常軌を脱した執着心です。
ヨカナーンに一目惚れをしたサロメは口づけを求めるのですが、近親相姦の娘であるサロメを汚らわしいと糾弾するヨカナーンは、当然サロメを拒絶します。ならば...とサロメはヨカナーンの首を求め、踊りの褒美として与えられたヨカナーンの首にキスをするのです。
ヤンデレここに極まれりですよ...
でも、ツボな人にはヒットしません...?だめ?
...とまぁ、こんな感じで...
「上演時間の短い、見やすい作品を知っていただきたい!」という思いから書き始めたこの記事ですが、蓋を開けてみれば、上級者向けのクセの強いオペラばかりになってしまいました。
どうしてこうなった。
初めて見るオペラとしては、少々パンチの効いたラインナップとなってしまいましたが、「オペラってそういう作品もあるんだ!」という感じで、誰かのツボにヒットすれば幸いです。